NO.6 売れるかどうかを判断する「編集者的視点」
出版社は、初版ではほぼ赤字である。重版がかかって、はじめて「出版してよかった!」という儲けが生じる。
そういう事情があるため、編集者はさらに今度は「編集者的視点」で、この出版企画書を眺めるのだ。
「そういうポテンシャルを、この新人は持っているか!?」
出版企画書を見た数秒間で、編集者の長年の勘を働かせる!
勘と言っても、それは経験を通じて手に入れた「モノサシ」で計るだけだ。
《遠藤励起のモノサシ》
出版企画書にメリハリがあり、読んでみたいという表現になっている。
タイトルが具体的で、わくわくする魅力がある。
新人だけど、すごい実績と経験、多彩なネットワークを持っている。
肩書も含め、オリジナルのキャッチフレーズを持っている。
実績に伴ったテーマの企画になっている。自信にあふれている。
企画の切り口が類書に比べて斬新だ。類書にはない視点が盛り込まれている。
売れるマーケットを押さえている。今の時代に求められているテーマである。
読者のコアターゲットが明確。
発売前の仕込みや、発売直後の仕掛けも期待できる。
この著者は何冊も書けそう(※ここは、見逃されそうだが、大事なポイント)。
構成案(もくじ)が、わかりやすく、躍動感がある。
サンプル原稿が、うまい! 原稿に説得力がある。
執筆時間が早そう。
人物に好感が持てる(写真、経歴、生き方)。
そして、
理由はわからないが、著者の持つ「不思議なエネルギー」を感じる!(ほんとうは、これが一番大事!)。
等々、これまでの経験から、相手を判断する「著者になる人は、絶対これを持っているモノサシ」で無意識に計りだす。
その結果が、平均1~2%の採用率となってしまう。
そのくらい、まずは大手の出版社での出版とは「ハードルが高い」と考えてほしい。
編集者は、年間、月間のノルマがある(まあ、どんな企業でも同じだが)。ノルマをこなさないと、上長に叱られる。評価も下がり、ボーナスにも影響する(笑)。
だからこそ、大手の出版社のふつうの編集者は、どうしても「売れている著者」に走る。
一度売れると、シリーズ化を模索し、ノルマの土台を作ろうと必死になる。安定した売り上げが望めるからだ。
さらに、売れている作家をさまざまな伝手から探していく。
私だって、基本70%(安全)、売れている人20%(保障)、新人10%(挑戦)という割合で編集作業をしていたものだ。
ただ、ふつうの編集者は、売れている人90%になる。失敗を恐れ、新人にまったく興味を示さなくなる。そんな余裕がないからだ。
だから、有能な新人が世に出にくいのである(有能な新人が世に出にくいのには、また別の理由があるので、その話はまた別項でお話ししたい。ヒントは、出版企画書にある)。
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