NO.9 「コップの水」
私は、出版したい人に出逢ったとき、最初にこの話をすることにしている。
「あなたのコップの水は、あふれ出ていますか?」
コップの水とは、あなたの専門分野でどれだけの経験を積んだか、という「経験値」のことだ。
何を学び、実践し、成果を上げ、オリジナルの技術を編み出し、どれだけの影響力を発揮し、何人の生活や人生を変えたか。それが、いかに他者と違う魅力があるか。
コップの水とは、すなわち、あなたの「魅力のパワー」に他ならない。
つまり、出版企画書を見た編集者を一瞬でトリコにする「著者プロフィール」につながっていく。
そして、本とは、そのコップからあふれ出た水が形を変えたものにすぎない。
これまで再三、うるさいくらい話してきた(笑)「まだ著者になってはいけない人」とは、このコップの水があふれ出ていない人のことを指す。それ以前に、コップの水が半分しかない人のことでもある。
でも、そこに無理やり継ぎ足して、あふれさせようとする人もいる。
たとえば、コップの水がオレンジジュースだとしよう。おいしいオレンジジュースである。生の搾りたてのオレンジジュースに、まぜてもわからないだろうと、水を加えてお客さんに出したとしよう。さあ、どうなるか。
以前、本物と称して、偽物の食材で作った料理を見抜けるか? というバラエティー番組があった。ふつうの奥さんたちは、おいしい、おいしい、とありがたがって食べていた。ところが、一流の食通が口にした瞬間、「これ、違うよね!」とズバリ見破っていたのだ。
また、一流の料亭やレストランで、食材を偽って料理を提供していたという事件が頻発していたことがあった。この店で出すのだから、本物だろうと、お客は素直に信じて、大金を払っていたのだ。
素人は騙せても、本物は騙せない!!!
本の世界でも同じことが言えないだろうか。
水で薄められたオレンジジュースを飲まされたら、ふつうは果汁100%じゃない、と感じるはずだ。
あなたは、どうだろう。ほんとうの本好き、本を大事にする読者に受け入れられる、おいしい著者になっているだろうか。
誰かのうまい言葉にそそのかされて、水増しした本を出版しようとしてはいないだろうか。
コップの水がまだあふれていない人は、今、出版を諦める勇気を持つことも大事な決断である。そして数年後、研鑽を積んで、再度挑戦すればいい。
(※この章、いったん終わり)
第1章 出版したければ、この現実を知りなさい! 終了。
というわけで、さんざん「出版はハードルが高いんだよ~」ということを、話してきたが、「それでは救われない!」という落胆の声がいっぱい聞こえてくるので(笑)、次章からは、「じゃあ、出版未経験者が、どうしたら作家デビューできるのか。その可能性はどうしたら高められるのか、を微に入り細に入りお話ししていきたいと思う。
じつは、この視点をしっかり持ち、自分を棚卸して、強みを生かした出版企画書ができれば、編集者は意外にも興味を持ってくれるのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿